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上場会社向けナビゲーションシステム​ >企業行動規範 >【買収への対応方針の導入等に係る上場制度の概要】概要

ガイドブック詳細 【買収への対応方針の導入等に係る上場制度の概要】概要

内容

(1)適時開示

上場会社の業務執行を決定する機関が新株又は新株予約権の発行(自己株式又は自己新株予約権を引き受ける者の募集を含む。)を行うことについての決定をした場合には、上場規程に基づき、その内容を開示することが義務付けられていますが、買収への対応方針の導入又は買収への対抗措置の発動に伴う発行に関しては、適時開示上の軽微基準が設けられていません。

事前警告型の買収への対応方針や条件決議型の買収への対応方針の導入など、導入時点では新株又は新株予約権の発行を伴わない買収への対応方針の導入についても、当該情報が投資者の投資判断に重大な影響を与えないと判断される場合を除き、開示が必要となります。また、(平時導入の買収への対応方針に関して)具体的に買収者が出現した場合、買収への対応方針に基づき、買収への対抗措置を発動した場合、又は買収への対応方針や買収への対抗措置を廃止した場合にも、「開示事項の経過」として開示してください。また、買収への対応方針の内容の変更を行った場合も、「開示事項の変更」として開示してください。


※ 買収への対応方針の導入の開示にあたっては、当該買収への対応方針の内容を投資者が適切に理解・判断できるよう記載してください。また、開示上の注意事項に掲げた開示すべき内容に限らず、当該買収への対応方針の内容を投資者が適切に理解・判断するために重要な内容も記載してください。なお、最初の開示時点において決定できない内容がある場合には、決定次第「開示事項の経過」として追加の開示を行ってください



(2)遵守事項

上場会社は、買収への対応方針を導入(買収への対応方針の具体的内容を決定することをいう。)する場合は、以下の4つの事項を遵守することが義務付けられています。

【上場規程第440条】


① 開示の十分性

 

買収への対応方針に関して必要かつ十分な適時開示を行うこと

 

: 買収への対応方針の適時開示にあたっては、株主による買収への対応方針に対する賛否の判断及び投資者による投資判断のための十分な基礎となる情報を提供することが必要となります(開示上の注意事項に関しては、「3.(2)」をご覧ください)


② 透明性

 

買収への対抗措置の発動及び廃止の条件が経営者の恣意的な判断に依存するものでないこと

 

: 買収への対抗措置の発動及び廃止の条件が、経営者の判断に依存するものである場合には、その判断過程が不透明であることなどにより、経営者によって発動・廃止等が恣意的に決定されるおそれがあります。これは、企業価値基準の観点から不適当であるのみならず、投資者に対して十分な投資判断材料が与えられないこととなり、投資者は会社の動向に関して不透明な状態での売買を強いられる結果となります。そのため、買収への対抗措置の発動及び廃止の条件は、経営者の恣意的な判断に依存するものでないことが求められます。


③ 流通市場への影響

 

株式の価格形成を著しく不安定にする要因その他投資者に不測の損害を与える要因を含む買収への対応方針でないこと

 

: 買収への対応方針の内容そのものに、株価形成を著しく不安定にする、投資者の保有している株式の価値を低下させるなどの要素がないことが求められます


④ 株主の権利の尊重

 

株主の権利内容及びその行使に配慮した内容の買収への対応方針であること

 

: 買収への対応方針には様々な形態が考えられますが、そのなかには、買収者を含む株主の議決権の構造を変更する方法や、議決権以外の財産権の毀損を伴う方法もあります。そのため、買収への対応方針の導入にあたっては、株主の権利内容及びその行使に配慮することが必要となります


(3)遵守事項に反する旨の公表

東証では、買収への対応方針の導入に係る遵守事項の実効性を確保するため、上場会社及び新規上場申請者に対して以下のような対応を講ずることとしています。


① 遵守事項に反する旨の公表

東証は、上場会社が遵守事項を尊重していないと認める場合には、その旨を公表することができます。東証は、この認定については、買収への対応方針の内容及びその開示状況を総合的に勘案して行います

【上場規程第508条第1項第2号】



② 新規上場審査

規上場申請者が買収への対応方針を導入している場合には、上場規程第440条各号に掲げる事項を遵守していることを上場審査における適格性の要件とします

【上場審査等に関するガイドライン Ⅱ 6.(1)b等】



(4)株主の権利の不当な制限に係る上場廃止等

東証では、買収への対応方針の導入に係る遵守事項の実効性を確保するため、上場会社及び新規上場申請者に対して以下のような対応を講ずることとしています。


① 上場廃止

東証は、上場会社について、「株主の権利内容及びその行使が不当に制限されているとして施行規則に定める」場合には、その上場を廃止するものとしています。

上場規程第601条第1項第15号


※ 当該上場廃止基準の対象となる行為は、遵守事項に反する旨の公表措置とは異なり、買収への対応方針の導入に限られるものではありません。



「株主の権利内容及びその行使が不当に制限されているとして施行規則に定める」場合とは、上場会社が次に掲げる行為を行っていると東証が認めた場合その他株主の権利内容及びその行使が不当に制限されていると東証が認めた場合をいいます。

【施行規則第601条第12項】


随伴性のないライツプランの導入

 

ライツプランのうち、行使価額が株式の時価より著しく低い新株予約権を導入時点の株主等に対し割り当てておくものの導入(実質的に買収への対抗措置の発動の時点の株主に割り当てるために、買収への対応方針の導入時点において暫定的に特定の者に割り当てておく場合を除く。

 

: このような随伴性のないライツプランが実際に発動されると、新株予約権の割当日より後に株式を取得した株主については、買収者であるか否かにかかわらず、保有している株式の希薄化による著しい損失を被ることになります。また、実際に発動されないまでも、発動が懸念される状況が生じた際には、株式の価格形成が極めて不安定となることが想定されます。そのため、このような随伴性のないライツプランの導入は、株価形成を著しく不安定にするおそれがあるとともに、株主の財産権を不当に毀損するものとして、上場廃止の対象となります。


他方、いわゆる信託型ライツプランでは、新株予約権が当初信託銀行に対して発行され、買収者が出現し、所定の発動事由が充足された後にはじめて、信託銀行から発動の際の株主に対して交付される仕組みであり、その結果、新株予約権の発行後に株主となった者も含め、発動の際の株主は等しく新株予約権の交付を受けられます。このような実質的に随伴性が確保されたライツプランの導入は、事前警告型や条件決議型など導入時点で新株予約権の発行を伴わない買収への対応方針と随伴性の点で差異がないので、「随伴性のないライツプランの導入」による上場廃止の対象とはなりません。


デッドハンド型のライツプランの導入

 

株主総会で取締役の過半数の交代が決議された場合においても、なお廃止又は不発動とすることができないライツプランの導入

 

: いわゆるデッドハンド型のライツプランについては、企業価値防衛指針において、企業価値を向上する買収提案さえも実現しない、企業価値基準に反する買収への対応方針であるとされています。東証の上場制度上も、このような買収への対応方針を導入している会社の株式は、事実上経営者を交代させるという株主の権利の行使が不当に制限された状態にあるものとして、上場廃止の対象となります。


拒否権付種類株式の発行

 

拒否権付種類株式のうち、取締役の過半数の選解任その他の重要な事項について種類株主総会の決議を要する旨の定めがなされたものの発行に係る決議又は決定(会社の事業目的、拒否権付種類株式の発行目的、権利内容及び割当対象者の属性その他の条件に照らして、株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除く。)

 

※ 持株会社である上場会社の主要な事業を行っている子会社が拒否権付種類株式(会社法第108条第1項第8号)又は取締役選任権付種類株式(会社法第108条第1項第9号)を当該上場会社以外の者を割当先として発行する場合において、当該種類株式の発行が当該上場会社に対する買収の実現を困難にする方策であると東証が認めるときは、当該上場会社が重要な事項について種類株主総会の決議を要する旨の定めがなされた拒否権付種類株式を発行するものとして取り扱う。

 

: 取締役の過半数の選解任その他の重要な事項について種類株主総会の決議を要する旨の定めがなされた拒否権付種類株式の発行は、取締役の選解任などの株主にとって重要な権利を不当に制限するものなので、当該発行に係る決議又は決定は、上場廃止の対象となります。

ただし、「会社の事業目的、拒否権付種類株式の発行目的、割当対象者の属性及び権利内容その他の条件に照らして、株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合」には、例外的にその発行が許容されます。この要件に該当する可能性がある場合としては、民営化企業が、その企業行動が国の政策目的に著しく矛盾することがないよう、国を割当先として拒否権付種類株式を発行する場合が考えられますが、具体的には事前相談において、個別の事案ごとに判断することとします。

また、持株会社である上場会社については、その子会社が拒否権付種類株式又は取締役選任権付種類株式を上場会社以外の者に対して発行する場合も、上場廃止基準の対象となる可能性があるため、このような子会社による株式の発行を検討する際、必ず東証まで事前相談を行うようにしてください。また、実際にこのような株式を子会社が発行する場合には、直ちに東証に通知しなければならないこととしています。

【施行規則第418条第20号】

※ 既上場会社が新たに拒否権付種類株式を発行する場合については、既存の一般株主の利益が侵害されるおそれが大きいため、上場廃止に係る規定の例外の適用は慎重に行います。


議決権制限株式への変更

 

株主総会において議決権を行使できる事項のうち取締役の過半数の選解任その他の重要な事項について制限のある種類の株式への変更に係る決議又は決定(株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除く。)

 

: 上場株券をいわゆる議決権制限株式に変更する場合であって、制限する議決権の内容が取締役の過半数の選解任その他の重要な事項である場合には、当該事項に係る株主の議決権を不当に制限しているといえるため、株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除いて、上場廃止の対象となります。


上場株券等より議決権の多い株式の発行

 

上場株券等より議決権の多い株式の発行に係る決議又は決定(株主及び投資者の利益を侵害するおそれが大きいと東証が認めるものに限る。)

 

: 上場株券より議決権の多い株式(取締役の選解任その他の重要な事項について株主総会において一個の議決権を行使することができる数の株式に係る剰余金の配当請求権その他の経済的利益を受ける権利の価額等が上場株券より低い株式をいいます。)で株主及び投資者の利益を侵害するおそれが大きいと東証が認めるものの発行は、上場廃止の対象となります。


議決権の比率が300%を超える第三者割当

 

議決権の比率が300%を超える第三者割当に係る決議又は決定(株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除く。

 

: 第三者割当を行う場合において、希薄化率が300%を超えるときは、株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除き、上場廃止の対象となります。


    ※ なお、議決権の比率の計算方法等については、施行規則第435条の2に規定されています。詳細は、【第三者割当に係る上場制度の概要及び実務上の留意事項】をご参照ください。


議決権を失う株主が生じることとなる株式併合

 

株主総会における議決権を失う株主が生じることとなる株式併合その他同等の効果をもたらす行為係る決議又は決定(株主及び投資者の利益を侵害するおそれが大きいと東証が認めるものに限る。)

 

: 株主総会における議決権を失う株主が生じることとなる株式併合その他同等の効果をもたらす行為を行う場合であって、株主及び投資者の利益を侵害するおそれが大きいと東証が認めるものは、上場廃止の対象となります。



② 新規上場審査

「株主の権利内容及びその行使が不当に制限されていないこと」を上場審査における適格性の要件とします。


【上場審査等に関するガイドライン Ⅱ 6.(1)a等】



上場会社の組織再編に係る新設会社等の簡易な上場審査においては、上場時において、上場銘柄が上場規程第601条第1項第15号に規定する「株主の権利内容及びその行使が不当に制限されていると東証が認めた場合並びに同項第19号及び第20号」に該当しないこととなる見込みがあることを要することとしています。

【上場規程第209条第2号等】

管理番号
7796

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