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ガイドブック 第三者割当に係る上場制度の概要及び実務上の留意事項
- 内容
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1.概要及び実務上の留意事項
東証では、内外の投資者が安心して投資できる環境の整備に向けて、既存株主の権利を著しく侵害し市場の信頼性に重大な影響を及ぼす第三者割当を未然に防止するために300%を超える希薄化を伴う第三者割当などを上場廃止の審査の対象とするほか、希薄化率が25%以上となるときや、支配株主が異動することになるときは、経営者から一定程度独立した者による当該割当の必要性及び相当性に関する意見の入手や、当該割当に係る株主総会の決議などの株主の意思確認などの手続きを求めることとする企業行動規範を設けるなど、第三者割当について上場制度上の対応を講じています。
〔用語の定義〕
用 語
定 義
第三者割当
開示府令第19条第2項第1号ヲに規定する第三者割当をいう。
【上場規程第2条第67号の2】
募集株式等
募集株式(会社法第199条第1項に規定する募集株式及び優先出資法に規定する募集優先出資並びにこれらに相当する外国の法令の規定により割り当てる株式をいう。)並びに会社法第238条第1項に規定する募集新株予約権及びこれに相当する外国の法令の規定により割り当てる新株予約権をいう。
【上場規程第2条第84号及び第84号の2】
※ 「希薄化率」の算出方法については、後述の〔希薄化率の算出方法〕を参照してください。
(1)第三者割当に係る企業行動規範上の遵守事項
上場会社が第三者割当を行う場合で、次の①又は②に該当するときは、a.又はb.の手続きのいずれかを行うことが義務付けられています。
ただし、緊急性が極めて高い場合は、例外的にa.又b.の手続きは不要とします。
【上場規程第432条】
第三者割当に係る企業行動規範に違反した場合は、公表措置、上場契約違約金の徴求、改善報告書・改善状況報告書の徴求、特別注意銘柄への指定など所定の措置を講ずることがありますので、十分に留意してください。
〔企業行動規範上の手続きが必要となる場合〕
① 希薄化率が25%以上となるとき
② 支配株主が異動することになるとき
※ ①②の判断においては、第三者割当によって生じる潜在株式に係る議決権数を考慮します。
※ 希薄化率の算出方法については、後述の〔希薄化率の算出方法〕を参照してください。
〔企業行動規範上の手続き〕
a.経営者から一定程度独立した者による当該割当ての必要性及び相当性に関する意見の入手
b.当該割当てに係る株主総会の決議などによる株主の意思確認
※ 「経営者から一定程度独立した者」とは、第三者委員会、社外取締役、社外監査役などを想定しています。第三者委員会の構成については、例えば、現在の買収への対応方針導入会社の実務において見られる仕組みを参考にしていただくことを想定しています。
※ 「当該割当の必要性及び相当性に関する意見」の内容については、資金調達を行う必要があるか、他の手段との比較(例えば、新株予約権の第三者割当を行う場合で言えば、借入れ、社債発行、公募増資、株式の第三者割当、新株予約権付社債の第三者割当などの他の資金調達方法との比較)で今回採用するスキームを選択することが相当であるか、同社のおかれた状況に照らして各種の発行条件の内容が相当であるかという点を中心に言及していただくことを想定しています。
※ 「株主の意思確認」とは、正式な株主総会の決議のほか、いわゆる勧告的決議を行うことなどを想定しています。
※ 通常の場合、「a.経営者から一定程度独立した者による当該割当ての必要性及び相当性に関する意見の入手」については取締役会決議日までに、「b.当該割当てに係る株主総会の決議などの株主の意思確認」については払込期日までに実施することが求められます。
※ 必要に応じて、手続きを行ったことを証明する書類の提出を求めることがあります。
〔「緊急性が極めて高い場合」とは〕
「緊急性が極めて高い場合」とは、資金繰りが急速に悪化していることなどにより上記の企業行動規範上の手続きのいずれも行うことが困難であると東証が認めた場合をいいます。
【施行規則第435条の2第3項】
※ 「緊急性が極めて高い場合」とは、具体的には、資金繰りが急速に悪化して、上記の企業行動規範上の手続きを行うことが時間的に困難である場合などを想定しています。ただし、求められる手続きについて、「株主意思の確認」に限定しないなど柔軟に対応していますので、緊急性が極めて高いものとして手続きが不要となるケースは、極めて限定的になると考えられます。
〔希薄化率の算出方法〕
算式 (A÷B)×100 (%)
算式の符号
A 当該第三者割当により割り当てられる募集株式等に係る議決権の数(当該募集株式等の転換又は行使により交付される株式に係る議決権の数を含む。)
B 当該第三者割当に係る募集事項の決定前における発行済株式に係る議決権の総数
【注】 ただし、当該第三者割当の払込金額の算定方法及び割当ての態様等を勘案して、東証がこの算式により算出した値によることが適当でないと認めたときの希薄化率については、東証がその都度定めるところによります。
【施行規則第435条の2第1項及び第2項】
※ 希薄化率の算出において、Aについては、新株予約権の潜在株式など(行使価額等が修正される場合にあっては、その下限価額における潜在株式)は、当該第三者割当による発行株式とみなします。
※ 希薄化率の算出において、Bについては、発行済株式には、募集事項決定前に存在する潜在株式は含めません。
※ 第三者割当を短期間(6か月を目安)に複数回実施する場合には、これらの第三者割当を一体とみなして、上記の算出方法を適用するものとします(開示の軽微基準に該当する第三者割当も、原則として含めます。)。
(2)第三者割当に係る上場廃止基準
① 希薄化率が300%超の第三者割当
上場会社が第三者割当を行う場合において、希薄化率が300%を超えるときは、株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合を除き、その上場を廃止します。
【上場規程第601条第1項第15号、施行規則第601条第12項第6号】
※ 希薄化率の算出方法については、〔希薄化率の算出方法〕を参照してください。
※ 「株主及び投資者の利益を侵害するおそれが少ないと東証が認める場合」としては、例えば、公的資金の注入といったケースや、経営破綻のおそれがある状況下で、株主意思確認手続きを経たうえで民間スポンサーによる救済的な対応として実施されるケース、段階的な株主意思確認手続きとして、株主総会決議により定款変更を行い、発行可能株式総数を段階的に拡大していくようなケースについて、株主及び投資者の利益を毀損しないよう十分に配慮されたものであると認められる場合を想定しておりますが、個別の事情に応じて総合的な判断をすることが必要となりますので、十分な時間的余裕をもって必ず東証まで事前相談を行うようにしてください。
② 支配株主の異動を伴う第三者割当
第三者割当により支配株主が異動した場合において、3年以内に支配株主との取引に関する健全性が著しく毀損されていると東証が認めるときは、その上場を廃止します。
【上場規程第601条第1項第6号、施行規則第601条第6項】
※ 「支配株主」とは、親会社のほか、議決権の過半数を直接又は間接に保有する者として、施行規則第3条の2で定める者をいいます。
※ 「第三者割当により支配株主が異動した場合」とは、当該割当により支配株主が異動した場合及び当該割当により交付された募集株式等の転換又は行使により支配株主が異動する見込みがある場合をいいます。
※ 「3年以内」とは、上場会社が第三者割当により支配株主が異動した場合に該当した日が属する事業年度の末日の翌日から起算して3年を経過する日までの期間をいいます。
〔支配株主との取引状況等についての定期報告〕
・ 第三者割当により支配株主が異動した場合に該当した上場会社は、定期的に「支配株主との取引状況等に関する報告書」を提出する必要があります(原則として1年に1回)。詳細は、「内国株式関係の提出書類一覧」を参照してください。
〔支配株主との取引状況等の照会に対する報告〕
・ 第三者割当により支配株主が異動した場合に該当した上場会社は、支配株主との取引状況等に関し東証が必要と認めて照会を行った場合には、直ちに照会事項について正確に報告することが義務付けられています。
※ 東証では、「支配株主との取引に関する健全性が著しく毀損されていると東証が認めるとき」に該当するかどうかの審査は、上記支配株主との取引についての定期報告及び支配株主との取引状況等の照会に対する報告の内容に基づき、支配株主との間における取引行為の正当性や取引条件の合理性などについて確認することにより行うこととしています。
(3)第三者割当に係る適時開示
上場会社が第三者割当を行う場合は、以下の事項についても適時開示を行うことが義務付けられています。
a.割当てを受ける者の払込みに要する財産の存在について確認した内容
b.払込金額の算定根拠及びその具体的な内容
(東証が必要と認める場合は、払込金額が割当てを受ける者に特に有利でないことに係る適法性に関する監査役、監査等委員会又は監査委員会の意見等を含む。)。
c.企業行動規範上の手続きを要する場合にはその内容(手続きを要しない場合にはその理由)
d.その他第三者割当について東証が投資判断上重要と認める事項
【上場規程第402条本文、施行規則第402条の2】
詳細は、「発行する株式、処分する自己株式、発行する新株予約権、処分する自己新株予約権を引き受ける者の募集又は株式、新株予約権の売出し」を参照してください。
2.その他注意事項
(1)事前相談の必要性
事前相談は、開示予定の資料をあらかじめ提示したうえで行うこととしています。上場会社が第三者割当の決定を行う場合には、公表予定日の遅くとも10日前までに、必ず東証の上場会社担当者まで開示資料(案)をメールにてご送付ください。ただし、前例のないスキームを検討されている場合や遵守事項などの関係で懸念事項がある場合などには、さらに十分な時間的余裕を持って事前相談を行うようにしてください。
(2)不適当合併等に係る上場廃止審査
非上場会社を主たる割当先とする第三者割当等については、上場規程に基づく不適当合併等に係る上場廃止審査の対象となる場合があります。詳細は、「上場会社に対する自主規制の概要 【不適当合併に係る上場廃止審査の概要】」を参照してください。
(3)東証への提出書類
上場会社が第三者割当を行う場合は、割当を受ける者と反社会的勢力との関係がないことを示す確認書、譲渡報告に関する確約書の写しなど所定の書類を東証に対して提出することが義務付けられています。また、軽微基準に該当し、適時開示を行わない場合には、決議後直ちに取締役会決議通知書を東証に対して提出することが義務付けられています。詳細は、「内国株式関係の提出書類一覧及び適時開示に係る提出書類」を参照してください。
- 管理番号 7777