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上場会社向けナビゲーションシステム​ >企業行動規範 >【独立役員の確保に係る実務上の留意事項】独立役員の確保に係る実務上の留意事項について

ガイドブック詳細 【独立役員の確保に係る実務上の留意事項】独立役員の確保に係る実務上の留意事項について

内容

1.制度の趣旨・独立役員とは

上場会社は、一般株主保護のため、独立役員を1名以上確保しなければならない旨を、上場規程の企業行動規範(第4章第4節)のうち実効性確保手段の対象となる「遵守すべき事項」として規定しています。独立役員とは、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいいます。

独立役員制度は、一般株主保護の観点から、経営陣から独立した役員を1名以上確保することを上場会社に義務づけるものです。

  • 上場規程の企業行動規範の「遵守すべき事項」では、上場会社は、社外取締役を1名以上確保しなければならない旨を定めています(上場規程第437条の2)。また、コーポレートガバナンス・コード(原則4-8)では、独立社外取締役の選任について、プライム市場上場会社においては少なくとも3分の1以上を、その他の市場区分の上場会社においては少なくとも2名以上を選任すべきであるとしていますが、これは上場会社にそれらの割合・人数の独立社外取締役の選任を義務づけるものではありません。「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法の下、「実施しない理由」を説明することにより、当該原則を実施しないことも想定います(プライム市場上場会社においては3分の1以上、その他の市場区分の上場会社においては2名以上の独立社外取締役の選任を行わない場合には、その理由の説明が求められることになります。)。

  • 独立役員の法的な地位、責任範囲は会社法上の社外取締役、社外監査役と異なることはなく、その権限と責任、選任方法、任期等は、会社法の範囲内で定められるものである点が変わるものではありません。

     

     

2.独立役員の確保に係る企業行動規範

 

上場会社は、一般株主保護のため、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役(会社法第2条第15号に規定する社外取締役であって、会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第2条第3項第5号に規定する社外役員に該当する者をいう。)又は社外監査役(会社法第2条第16号に規定する社外監査役であって、会社法施行規則第2条第3項第5号に規定する社外役員に該当する者をいう。)をいう。以下同じ。)を1名以上確保することが義務づけられています。

 

【上場規程第436条の2】
 

 

上場会社は、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければなりません。

 

 

【上場規程第445条の4】
 

 

上場会社は、独立役員に関して記載した東証所定の「独立役員届出書」を東証に提出することが義務づけられています。

また、「独立役員届出書」の内容に変更が生じる場合には、原則として、変更が生じる日の2週間前までに変更内容を反映した「独立役員届出書」を東証に提出することが義務づけられています。

 

【施行規則第436条の2】

 

上場会社は、一般株主と利益相反が生じるおそれのない独立役員を1名以上確保することが義務づけられています。加えて、上場会社は、取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならないものとされています。

また、独立役員の確保に係る企業行動規範の遵守状況を確認するため、東証への「独立役員届出書」の提出を求めており、「独立役員届出書」は、公衆の縦覧に供することとしています。届出の詳細については、「独立役員届出書の提出に係る留意事項について」を参照してください。

なお、独立役員の確保の状況については、コーポレート・ガバナンス報告書における記載事項にもなります。詳細は「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を参照してください。

 

  • 要件に合致する社外役員が複数名存在する場合 

    企業行動規範上の義務は、1名以上の独立役員の確保です。要件に合致する社外役員が複数名存在する場合であっても、その全員を独立役員として届け出なければならないものではありません。

    なお、要件に合致する社外役員が複数名存在する場合に、その全員が独立役員として届け出られていないときは、全ての社外役員について属性情報を独立役員届出書に記載する必要があります(詳細は「5.社外役員に関する記載」を参照してください。)。

  • 独立役員を指定する際の手続

    独立役員を指定する場合の決定方法は、取締役会決議に限らず、上場会社の任意で定めることができます。なお、独立役員の指定にあたっては、書面その他の方法により独立役員となることに関する本人の同意を得たうえで、「独立役員届出書」に記載された内容の確認等を行ってください。

     

    1名以上の独立役員の確保及びその適切な届出が行われない場合は、企業行動規範に違反したものとして、公表措置、上場契約違約金の徴求、改善報告書・改善状況報告書の徴求、特別注意銘柄への指定など所定の措置を講ずることがあります。実効性確保手段の適用の要否は、独立役員が不在となった事情や、今後の方針等を総合的に勘案し、ケースバイケースの判断を行うことになります。例えば、独立役員が急病等のやむを得ない事情により不在となった場合には、基本的には、一時的に独立役員が不在となることをもって直ちに公表措置等を行うという判断とはならないと考えられます。

     

     

3.独立性に関する判断について

 

(1)概要

「一般株主と利益相反が生ずるおそれがない者」であるか否かは上場会社において実質的に判断する必要がありますが、例えば、独立役員として届け出ようとする者が、経営陣から著しいコントロールを受け得る者である場合や、経営陣に対して著しいコントロールを及ぼし得る者である場合には、一般株主との利益相反が生じるおそれがあり、独立役員の要件である「一般株主と利益相反の生じるおそれがない者」には該当しない可能性が高いと考えられます。

  • 東証は、下記(2)のとおり、「上場管理等に関するガイドライン」Ⅲ5.(3)の2において、類型的に一般株主と利益相反の生じるおそれがある場合を規定しています(以下、同項各号に定める事由を「独立性基準」といいます。)が、独立性基準に抵触しない場合であっても、上場会社における実質的な判断の結果「一般株主と利益相反が生ずるおそれがない」とはいえない場合には、独立役員の要件を満たさない点に留意が必要です。


(2)独立性基準について

東証は、「上場管理等に関するガイドライン」において、東証が一般株主と利益相反の生じるおそれがあると判断する場合の判断要素(独立性基準)を規定しており、独立性基準に抵触する場合には、独立役員として届け出ることができません。

既に独立役員に指定している者が事後的に独立性基準に抵触した場合には、直ちに独立役員届出書(その者について独立役員の指定を解除したもの)を再提出してください。

 

  • 独立性基準の抵触の有無に係る判断は、上場会社単体で考えることで差し支えありません。ただし、独立性基準に抵触しない場合であっても、「一般株主と利益相反が生ずるおそれがない」とはいえない場合は、独立役員の要件を満たさない点に留意が必要です。例えば、上場会社が持株会社形態であるような場合において、社外取締役・社外監査役が重要な事業子会社の「主要な取引先」の業務執行者であるような場合においては、その者を独立役員として届け出ようとする場合、「独立性基準」に抵触しないことが想定されますが、その者が一般株主と利益相反の生じるおそれがない者に該当するのかは、別個の検討が必要と考えられます。

  • コーポレートガバナンス・コードでは、「取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる者の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定・開示すべきである」(原則4-9)としています。この原則を実施する上場会社は、独立性基準を踏まえて、自社(グループ)の独立性判断基準を策定し、独立役員届出書やコーポレート・ガバナンス報告書等において開示してください。

     独立性基準の詳細は、こちらをご参照ください。



4.属性情報の記載

属性情報の記載については、こちらをご参照ください。
 

 

5.社外役員に関する記載

 

上場会社は、独立役員に指定しない社外役員についても、独立役員と同様に、独立性基準への該当状況や属性情報に関する記載を行うことが必要となります。

 

 

独立役員に指定する社外役員だけでなく、独立役員に指定しない社外役員の情報も含めた、全ての社外役員の情報の記載が必要です。全ての社外役員の氏名を明記したうえで、そのうち、独立役員に指定する社外役員には、その旨の印を付してください。具体的には、独立性基準及び属性情報の該当の有無のチェックと、該当状況についての説明が必要となります。

独立役員届出書における具体的な記載方法については、「独立役員届出書の提出に係る留意事項について」を参照してください。

 

 

 

自社の社外役員のうち、独立役員として指定しうる社外役員の全員を独立役員として指定している旨を明記した場合には、独立役員に指定されていない社外役員についての独立性基準への該当状況及び属性情報の記載を、省略することができます。

 

 

独立役員届出書の様式においては、「独立役員の資格を充たす者を全て独立役員に指定している」というチェックボックスを設けています。このチェックボックスをチェックした場合には、独立役員として指定されていない社外役員については、上場会社が、独立役員の資格を充たす者ではないと判断したことが明らかになるため、当該社外役員について、「役員の属性」の項目について記載を行う必要はありません。

例えば、社外役員が5名選任されている上場会社において、そのうち3名が独立役員の資格を充たしており、残りの2名は独立役員の資格を充たしていないときに、同社が、独立役員として指定しうる3名全員を独立役員として指定していて、かつ、そのことを独立役員届出書のチェックボックスにおいて明示した場合には、それ以外の2名の社外役員については、独立性基準への該当状況や属性情報の記載を行う必要はありません。

 

 

6.独立役員届出書の更新

独立役員届出書の更新を行う場合の取扱いは、以下のとおりです。

 

〔株主総会前における提出〕

○株主総会において独立役員・社外役員の構成が変わることが予定されている場合や、属性情報の記載内容に変更がある場合(※1)には、その2週間前までに独立役員届出書を提出してください。実務上は、電子提供措置をとる株主総会資料の電子ファイルをTDnetを通じて当取引所に提出する(施行規則第420条第1項 )際や、招集通知の株主への発送に先立ってTDnetを通じて当取引所に招集通知の電子ファイルを提出する場合(コーポレートガバナンス・コード補充原則1-2②参照)はその際に、独立役員届出書も併せて提出することが考えられます。

 

〔期中における提出〕

○期中において、独立役員届出書の内容に変更がある場合(※2・※3)には、原則として変更が生ずる日の2週間前までに独立役員届出書を提出してください。

 

※1 「再任」の場合でも、定時株主総会の前のタイミングにおいて、取引関係等の記載の更新の要否を確認し、記載内容に変更がある場合には、変更後の独立役員届出書を提出してください。

 

※2 期中において独立役員届出書の再提出が必要となるのは、以下の場合です(これらに該当しない場合でも、上場会社が任意で記載内容の見直しを行うことは可能です。)。この場合には、以下に掲げる再提出に係る者についてのみ記載内容の更新を行えばよく、それ以外の者に関しては、記載内容の更新を行う必要はありません。

・独立役員を新たに指定する場合

・独立役員を指定解除する場合(社外役員の辞任による場合のみならず、社外役員としての地位に変動はなく独立役員の指定のみを解除する場合も含みます。)

 

※3 以下の場合は、その時点において独立役員届出書の再提出は不要であり、その後の株主総会において社外役員の選任議案(再任を含む。)が付議されることに伴い独立役員届出書を提出する際に、変更内容を反映してください。

・属性情報の有無について変更がある場合(例えば、当初提出した独立役員届出書においては、取引関係はないとしていたが、期中において取引関係が生じた場合や、取引関係がある先の業務執行者に就任した場合など。)

・属性情報の概要について変更がある場合(例えば、当初提出した独立役員届出書において記載していた取引の金額等が、期中において変動した場合など。)

・独立役員に指定していない社外役員が独立性基準に該当することとなった場合

管理番号
7800

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