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ガイドブック詳細 【企業行動規範の概要】遵守すべき事項
- 内容
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(1)第三者割当に係る遵守事項
上場会社が第三者割当を行う場合で、①希薄化率が25%以上となるとき又は②支配株主が異動することになるときは、原則として、a.経営者から一定程度独立した者による当該割当の必要性及び相当性に関する意見の入手、又は、b.当該割当に係る株主総会の決議などの株主の意思確認の手続きを経ることが義務付けられています。ただし、例えば、資金繰りが急速に悪化してa.又はb.の手続きを行うことが困難であるなど、緊急性が極めて高い場合は、例外的に当該手続きを不要とすることとしています。
【上場規程第432条、施行規則第435条の2第3項】
詳細は、【第三者割当に係る上場制度の概要及び実務上の留意事項等】を参照してください。
(2)流通市場に混乱をもたらすおそれ又は株主の利益の侵害をもたらすおそれのある株式分割、株式無償割当て、
新株予約権無償割当て、株式併合又は単元株式数の変更の禁止上場会社は、流通市場に混乱をもたらすおそれ又は株主の利益の侵害をもたらすおそれのある株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て、株式併合又は単元株式数の変更を行うことが禁止されています。
例えば、1株あたりの株価が100円未満となることが見込まれる株式分割については、当該禁止規定に反するおそれがあることから、当取引所からその理由等について慎重に確認します。【上場規程第433条】
〔留意事項〕
東証は、上場会社について、「株主の権利内容及びその行使が不当に制限されている」場合には、その上場を廃止するものとしています。
【上場規程第601条第1項第15号】
○ 株主総会における議決権を失う株主が生じることとなる株式併合
上場会社が、株主総会における議決権を失う株主が生じることとなる株式併合その他同等の効果をもたらす行為に係る決議又は決定(株主及び投資者の利益を侵害するおそれが大きいと東証が認めるものに限る。)を行った場合は、株主の権利内容及びその行使が不当に制限されているものとして、その上場を廃止することとしています。
【施行規則第601条第12項第7号】
(3)MSCB等の発行に係る遵守事項
上場会社は、MSCB等を発行する場合には、MSCB等の買受人による転換又は行使を制限するよう措置を講じることが義務付けられています。また、上場会社は、企業行動規範に基づき、流通市場の機能又は株主の権利を毀損すると東証が認める行為を行うことが禁止されています。
【上場規程第434条】
詳細は、【MSCB等の発行に関する実務上の留意事項】を参照してください。
(4)書面による議決権行使等の義務
上場内国会社は、株主総会を招集する場合には、会社法第298条第1項第3号に掲げる事項(*)を定めることが義務付けられています。ただし、株主の全部に対して会社法の規定に基づき株主総会の通知に際して委任状の用紙を交付することにより議決権の行使を第三者に代理させることを勧誘している場合は、当該義務違反とはなりません。
(*)「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」
【上場規程第435条】
(5)上場外国会社における議決権行使を容易にする環境整備
上場外国会社(その発行する上場外国株券等が東証を主たる市場とする上場外国会社に限る。)は、株主総会の招集をする場合には、日本語で記載された指図書(*1)及び外国株券等実質株主が議決権行使の指示を行うために十分な内容を記載した参考書類(*2)を、原則として、当該株主総会の日の2週間前までに、外国株券等実質株主に対して発送することが義務付けられています。なお、適用に当たっては、当該上場外国会社の本国等における法制度、実務慣行等を勘案するものとしますので、取扱いその他については東証まで相談してください。
(*1)外国株券等実質株主が議決権行使の指示を行うための書面をいう。
(*2)議決権行使の指示について参考となるべき事項を記載した書類をいう。
【上場規程第436条】
(6)独立役員の確保
上場内国会社は、一般株主保護のため、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役(会社法第2条第15号に規定する社外取締役であって、会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第2条第3項第5号に規定する社外役員に該当する者をいう。)又は社外監査役(会社法第2条第16号に規定する社外監査役であって、会社法施行規則第2条第3項第5号に規定する社外役員に該当する者をいう。)をいう。以下同じ。)を1名以上確保することが義務付けられています。
【上場規程第436条の2】
なお、上場内国会社は、独立役員に関して記載した東証所定の「独立役員届出書」を東証に提出することが義務付けられています。
また、「独立役員届出書」の内容に変更が生じる場合には、原則として、変更が生じる日の2週間前までに変更内容を反映した「独立役員届出書」を東証に提出することが義務付けられています。
【施行規則第436条の2】
詳細は、【独立役員の確保に係る実務上の留意事項】を参照してください。
(7)コーポレートガバナンス・コードを実施するか、実施しない場合の理由の説明
上場内国会社は、「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由をコーポレート・ガバナンスに関する報告書において説明すること(コンプライ・オア・エクスプレイン)が義務付けられています。これは、コードの各原則を実施することを一律に義務付けるものではなく、コードの各原則の中に、自らの個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことが想定されているものです。
「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」ことが必要となる各原則の範囲は、上場会社の市場区分ごとに、以下のとおり定めています。
スタンダード市場及びプライム市場の上場内国会社: 基本原則・原則・補充原則
グロース市場の上場内国会社: 基本原則
【上場規程第436条の3】
「コーポレートガバナンス・コード」の詳細については、【コーポレートガバナンス・コード】を参照してください。コーポレート・ガバナンスに関する報告書の提出時期や記載方法については、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を参照してください。
(8)上場内国会社の機関
上場内国会社は、以下に掲げる機関を置くことが義務付けられています(※)。
(1)取締役会
(2)監査役会、監査等委員会又は指名委員会等(会社法第2条第12号に規定する指名委員会等をいう。)
(3)会計監査人
【上場規程第437条】
(9)社外取締役の確保
上場内国会社は、社外取締役(会社法第2条第15号に規定する社外取締役をいう)を1名以上確保することが義務付けられています。
【上場規程第437条の2】
これは、一般株主保護の観点からすべての上場内国会社に社外取締役の確保を求めるものであり、社外取締役の選任状況については、コーポレート・ガバナンスに関する報告書における記載事項にもなります。コーポレート・ガバナンスに関する報告書の詳細については、「コーポレートガバナンスに関する報告書」を参照してください。
(10)公認会計士等
上場内国会社は、当該上場会社の会計監査人を、有価証券報告書又は半期報告書に記載される財務諸表等又は中間財務諸表等の監査証明等を行う公認会計士等として選任することが義務付けられています。また、四半期決算短信に添付される四半期財務諸表等について公認会計士等による期中レビューを受ける場合にも、当該上場会社の会計監査人を当該四半期財務諸表等の期中レビューを行う公認会計士等として選任することが義務付けられています。
(11)業務の適正を確保するために必要な体制整備
上場内国会社は、当該上場会社の取締役又は執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他上場内国会社の業務並びに当該上場内国会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備(会社法第362条第4項第6号、同法第399条の13第1項第1号ハ又は同法第416条第1項第1号ホに規定する体制の整備をいう。)を決定するとともに、当該体制を適切に構築し運用することが義務付けられています。
例えば、取締役会において決定された方針どおりに組織体制の構築や社内規則の整備がなされていない事実や、方針どおりに組織体制や社内規則が運用されていない事実など上場会社において会社法上の内部統制システムの構築及び運用に不備のある事実が判明した場合であって、その程度が当取引所の市場に対する株主及び投資者の信頼確保の見地から看過することができないと当取引所が認めるときは、当取引所の上場会社に求められる内部統制システムが適切に構築及び運用されていなかったものとして、改善報告書などの上場規程に定める措置を講ずることとなります。
東証が、平時や個別の不祥事の都度、上場会社の内部統制システムの構築・運用状況を調査・モニタリングすることは想定しておりません。また、例えば会社法上の内部統制システムの運用状況などについて、コーポレート・ガバナンス報告書などにおいて、上場会社による追加的な開示を求めるものではありません。
【上場規程第439条】
(12)買収への対応方針の導入に係る遵守事項
上場会社は、買収への対応方針を導入(買収への対応方針の具体的内容を決定することをいう。)する場合は、以下に掲げる事項を遵守することが義務付けられています。
(1)開示の十分性
買収への対応方針に関して必要かつ十分な適時開示を行うこと。
(2)透明性
買収への対抗措置の発動(買収への対抗措置を実行することをいう。以下同じ。)及び廃止(発動された買収への対抗措置を取り止めることをいう。)の条件が経営者の恣意的な判断に依存するものでないこと。
(3)流通市場への影響
株式の価格形成を著しく不安定にする要因その他投資者に不測の損害を与える要因を含む買収への対応方針でないこと。
(4)株主の権利の尊重
株主の権利内容及びその行使に配慮した内容の買収への対応方針であること。
【上場規程第440条】
詳細は、【買収への対応方針の導入等に係る上場制度の概要】を参照してください。
(13)MBO等の開示に係る遵守事項
上場会社は、MBO等(公開買付者が対象者の役員である公開買付け(公開買付者が対象者の役員の依頼に基づき公開買付けを行う者であって対象者の役員と利益を共通にする者である公開買付けを含む。)又は支配株主その他施行規則で定める者による公開買付け。)に関して意見表明等を行う場合は、適時開示を必要かつ十分に行うことが義務付けられています。
【上場規程第441条、第441条の2】
〔MBO等の開示に係る適時開示実務上の取扱い〕
MBO等に関して意見表明等を行う場合の実務上の取扱い等については、「公開買付けに関する意見表明等」を参照してください。
(14)支配株主との重要な取引等に係る遵守事項
支配株主を有する上場会社は、当該上場会社又はその子会社等の業務執行を決定する機関が、支配株主その他施行規則で定める者が関連する重要な取引等を行うことについての決定をする場合には、当該決定が当該上場会社の少数株主にとって不利益なものでないことに関し、当該支配株主との間に利害関係を有しない者による意見の入手を行うものとするほか、必要かつ十分な適時開示を行うことが義務付けられます。
【上場規程第441条の2、施行規則第436条の3】
なお、「支配株主」とは、親会社又は上場会社の議決権の過半数を直接若しくは間接に保有する者として施行規則で定める者(上場会社の主要株主(親会社を除く。)のうち、自己の計算において所有している上場会社の議決権と、当該主要株主の近親者並びに当該主要株主又は当該近親者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等(会社、指定法人、組合その他これらに準ずる企業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)をいう。以下同じ。)及び当該会社等の子会社が所有している上場会社の議決権の合計が過半数を占めている場合)をいいます。
【上場規程第2条第42号の2、施行規則第3条の2】
詳細は、【支配株主との重要な取引等に係る企業行動規範に関する実務上の留意事項等】を参照してください。
(15)内部者取引の禁止
上場会社は、当該上場会社の役員、代理人、使用人その他の従業員に対し、当該上場会社の計算における内部者取引(*)を行わせてはならないこととしています。
(*)金商法第166条及び第167条によって禁止される取引をいう。以下同じ。
【上場規程第442条】
なお、このほか、「望まれる事項」として「内部者取引等の未然防止に向けた体制整備」を定めています。「内部者取引等の未然防止に向けた体制整備」も併せて参照してください。(16)反社会的勢力の排除
上場会社は、上場会社が反社会的勢力の関与を受けているものとして、以下の関係を有することが禁止されています。
・ 次に掲げる者のいずれかが暴力団、暴力団員又はこれらに準ずる者(以下この項目において「暴力団等反社会的勢力」という。)である関係
a.上場会社
b.上場会社の親会社等
c.上場会社の子会社
d.上場会社の役員(取締役、会計参与(会計参与が法人であるときはその職務を行うべき社員を含む。)、監査役、執行役(理事及び監事その他これらに準ずるものを含む。)をいう。)
・ 上記のほか暴力団等反社会的勢力が上場会社の経営に関与している関係
【上場規程第443条、施行規則第436条の4】
なお、上場会社が反社会的勢力の関与を受けているものとして上記の禁止されている関係を有している事実が判明した場合において、その実態が東証の市場に対する株主及び投資者の信頼を著しく毀損したと東証が認めるときには、その上場を廃止することとしています。
【上場規程第601条第1項第19号、施行規則第601条第16項、同第436条の4】
このほか、「望まれる事項」として「反社会的勢力排除に向けた体制整備等」を定めています。「反社会的勢力排除に向けた体制整備等」も併せて参照してください。
(17)流通市場の機能又は株主の権利の毀損行為の禁止
上場会社は、企業行動規範上の「遵守すべき事項」に個々に掲げられた事項に加えて、流通市場の機能又は株主の権利を毀損すると東証が認める行為を行うことが禁止されています。
【上場規程第444条】
これは、企業行動規範の「遵守すべき事項」に関するいわゆるバスケット条項として定められているものであり、「遵守すべき事項」として個別に掲げる事項に加え、企業行動規範の趣旨に照らしてそれに準じる行動についても禁止するものです。
- 管理番号 7804