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資料 2023年度の不適正開示の発生状況等について
- 内容
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・不適正開示とは、有価証券上場規程に基づく会社情報の開示が適正に行われなかったものをいいます。
・以下では、直近年度における不適正開示の発生件数や不適正開示が生じやすい開示項目などについて掲載するとともに、
不適正開示の発生防止のためのツールについて紹介します。
1.不適正開示の発生状況1-1.不適正開示の発生件数(直近3ヶ年度)
【不適正開示の類型】
・開示漏れ・遅延:重要な会社情報を直ちに開示しなかった事例
・開示内容不備:事後に開示内容の重要な訂正が生じた事例、又は投資者に誤解を生じさせる開示を行った事例
・その他:開示より前に自社のHPにて開示内容を公表するなど、開示の手続きに瑕疵があった事例、又は未公表の情報の管理に不備があった事例など
【全開示件数に占める不適正開示件数の割合】
・「全開示件数」:プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の上場会社(内国会社及び外国会社)によるTDnetを通じた情報開示のうち、不適正開示の集計対象外となる縦覧書類等を除いた開示件数
1-2.不適正開示が発生した上場会社数、割合等(2023/4~2024/3)
【「1.不適正開示の発生状況」の総括】
・2023年度の東京証券取引所における全開示件数に占める不適正開示の割合は約0.4%、上場会社数ベースでの割合は7.7%となっています。
・近年同様に開示資料の99%以上が適正に開示されている一方、一定数の上場会社において不適正開示が生じています。
・同一年度内において不適正開示が複数回発生した上場会社や、前年度に引き続き不適正開示が発生した上場会社が増加しており、再発防止に向けた取組みが重要となります。
2.不適正開示が生じやすい開示項目・発生原因の状況(2023/4~2024/3)
【発生原因の類型】
・開示項目に関する理解不足:開示が必要な事実であるとの認識がなかった事例など
・開示要否等の確認体制不備:社内における開示の確認プロセスが不十分であった事例など
・開示時期に関する理解不足:取締役会での決定や発生事実の認識がされていながら、詳細が未確定な段階
での開示は不要と誤認していた事例など
・軽微基準に関する理解不足:軽微基準の認識や算出方法に誤りがあった事例など
・社内外との連携体制不備 :社内他部門や海外子会社などからの情報連携に不備があった事例など
【上位の開示項目及びその発生原因について】
■「その他の決定事実・発生事実(バスケット条項)」
・バスケット条項に該当する事実であることの認識がなく、開示が漏れてしまう事例が多数生じています。特に、決定事実としては「資金の借入」や「有価証券の売却」、発生事実としては「子会社からの配当金」や「補助金収入」についての開示漏れが生じやすい傾向にあります。個別に定められた開示項目に該当しない場合においても、バスケット条項に該当する可能性がありますので、注意が必要です。
バスケット条項に該当する事象は以下で例示していますのでご覧ください。
✓ https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge8110.html
✓ https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge8167.html
・また、開示時期の誤認も多く発生しており、例えば、以下の例が見られます。
✓ 資金の借入(返済も含む。)や投資有価証券の売却に関して、決定時ではなく、実行時に開示すれば良いと誤認していた例
✓ 子会社からの配当に関して、当該子会社側で株主総会に付議することを決定したことなどを、上場会社側で認識した時点ではなく、受領時に開示すれば良いと誤認していた例
✓ 補助金に関して、採択通知や交付決定通知などを受け補助金が交付されることを認識した時点ではなく、交付時に開示すれば良いと誤認していた例
バスケット条項に限らず、決定事実は業務執行を決定する機関による決議・決定が行われた時点、発生事実はその発生を認識した時点で開示を行う必要があります。
・バスケット条項は上場会社の運営、業務若しくは財産又は上場株式に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすものについて開示を義務付けるものです。適時開示ガイドブックでは定量的な開示の目安を示していますが、当該目安への該非にかかわらず、投資者の投資判断に及ぼす影響が重要であると認められる場合には、その内容を開示するようにしてください。
■「主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動」
・新株予約権の行使や株式の発行、自己株式の取得により、総株主の議決権の数が変動し、主要株主の異動が生じていたものの、その確認が漏れてしまっていた例が頻発しています。
・さらに、提出された大量保有報告書を確認し異動について認識はしていたものの開示は数日以内に行えば問題ないと考えていた例や、議決権の割合ではなく発行済株式数に占める株式数の割合を確認すればよいと誤認していた例が見られます。
■「子会社等の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の子会社等の異動を伴う事項」
・資本金に係る軽微基準による開示要否の確認を失念してしまっていた例や、他の子会社(孫会社)の株式を有する子会社等の異動において、当該他の子会社(孫会社)が本開示項目の開示対象となることを理解していなかった例などが見られます。
■「親会社の異動、支配株主(親会社を除く。)の異動又はその他の関係会社の異動」
・「主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動」と同様に、新株予約権の行使により総株主の議決権の数の変動が生じ、支配株主(親会社を除く。)の異動が生じていたものの、その確認が漏れてしまっていた例が見られます。
・また、その他の関係会社の異動が開示対象であるという認識がなく、開示が漏れてしまった例も見られました。
■「定款の変更」
・定款変更(軽微基準に該当する場合を除く。)が開示対象であるとの認識が不足していた例が多く発生しています。
・また、開示時期に関しても、株主総会に付議することを決定した時点ではなく、株主総会で決議された時点で開示すれば良いと誤認していた例が見られます。
■「発行する株式、処分する自己株式、発行する新株予約権、処分する自己新株予約権を引き受ける者の募集又は株式、新株予約権の売出し」
・過去に開示した資金使途の変更が決定されていたにも関わらず、その旨の開示が必要との認識がなく、開示が漏れてしまった例が見られました。中には、投資者の投資判断に影響を与える重要な会社情報の適時かつ適切な開示が行われなかったと認められ、実効性の確保に関する措置として「公表措置」の対象となったものがありました。
・募集株式数の変更や、資金使途の変更、割当先による第三者への新株予約権の譲渡など、過去に開示した内容に変更が生じた場合や、開示すべき経過事項が生じた場合には、その旨の開示が必要となります。
【「2.不適正開示が生じやすい開示項目・発生原因の状況」の総括】
・上記で紹介した開示項目以外の項目も含め、総じて単純な確認漏れや適時開示制度の理解不足が不適正開示につながっています。
・今後の不適正開示の発生を防止するために、
◆適時開示要否を判断する際の運用プロセスに問題がないかなど自社の適時開示体制について再確認することや、
◆適時開示に係る業務知識について十分に通じた開示担当者を常設できるよう、適時開示に係る業務知識のアップデートを
図ることや開示担当者の変更時の十分な業務引継ぎを行うこと
が重要と考えられます。
3.不適正な開示の未然防止のために
・適時開示に係る業務知識のアップデートや不適正開示の発生防止のために、以下のチェックリストやコンテンツをご用意しています。
①適時開示体制の有効性に関するセルフチェックリスト
✓ 適時開示体制の有効性について確認すべきポイントを一覧化しております。情報取扱責任者の交替時など、定期的に自社の開示体制を確認する際にご活用ください。
(https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge7862.html)
②上場会社向けセミナー動画
✓ 適時開示に関するセミナー動画について、適時開示実務未経験者向けの内容やケーススタディをもとにした実務的な
内容など複数のコンテンツをご用意しています。
(https://reg18.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=lhli-lgpike-8d71286dd3052f350bbaba37ae3c4c12)
③適時開示チェックシート
✓ 自社の軽微基準額の算出や個別案件を想定した開示要否の判定が可能なシートなどをとりまとめたExcelファイルです。
軽微基準額や開示要否の確認に際してご活用ください。
(https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge7863.html)
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